
★イベント終了レポート★『第33回青葉能』(12/8開催)
2014年01月09日
☆当ホールのボランティアライターズの方によるレポートです☆
公演や講座の雰囲気や感想を、みなさまに発信する活動をしています。
関東では公演機会の少ない、『舞金剛』を青葉の森公園芸術文化ホールの能舞台にて実施いたしました。
五流のうち四流の宗家が関東を本拠地にしている中で、関西に宗家が存在する唯一の流儀です。
金剛流の芸風は、豪華でめざましい動きの中にも、華麗・優美さがあり「舞金剛」といわれます。
公演前の事前セミナー、その後解説を行うことでより公演内容を深く楽しんでいただけたようです。
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12月8日(日)青葉の森公園芸術文化ホールで『第33回青葉能』の公演が行われました。それに先だち11月30日(土)に、「バックステージツアー ~能舞台に上がろう!!舞台裏見学~」というイベントがあり、能舞台に上がれるなんてまたとないチャンスと思い私も参加してきました。千葉市能楽連合会能楽普及委員会の伊藤朗さんが、面の付け方や、能の所作等を説明して下さり、とても貴重な体験ができました。
今回の青葉能は“金剛流”という関西を拠点とした流派で、関東地方での公演は非常に珍しいとのことです。さらに今回“事前セミナーと解説”という2つの嬉しい特典付。事前セミナーでは、金剛流宗家ご自身が金剛流の芸風であるアクロバティックな動きの中にも華麗で優美な舞い“金剛舞”のいわれを話してくださいました。次に解説では工藤寛さんが、あらすじを読んだだけではとても理解できない舞台の見どころをわかりやすく解説してくださいました。歌舞伎は大道具の舞台装置で、客席から見ていても場面や状況がわりますが、能は“いらない物は全て省く!”という「抽象的な舞台劇なので、見ている人の想像力が大事!」とのこと。能舞台を幾度か見ていくうちに、想像力で見えない物も見えてくるようになり、いつしか幽玄の世界へと深く引き込まれて行くのでしょうね。
“事前セミナーと解説”のおかげで『第33回青葉能』すべての演目「仕舞・狂言・黒塚」をより楽しめたことに感謝しております。このような機会に沢山の若い人達にも素晴らしい『能』を見に来てもらいたいと思いました。
ボランティアライターズ 清水尚子
青葉能金剛流『黒塚』を鑑賞して
『黒塚』を観終わった時には軽い疲労と虚脱感を覚えました。今までに「羅生門」、「紅葉狩り」を観た後は心地良い疲労感はありましたが、虚脱感は初めてでした。
二人の山伏が陸奥の安達が原で行き暮れ、粗末な一軒家に住む老女に一夜の宿を乞います。ところがこの老女の正体は人を食らう鬼女で、山伏達との凄まじい攻防の末、祈りに負け姿をくらまして行くというのが『黒塚』のあらすじです。能とは余分なものをそぎ落とし、省略した究極の芸術だと言われています。この『黒塚』も老松を背景に舞台やや中央にススキで組まれた粗末な家らしき物があるだけです。それだけで、野中の風景、老女の侘び住まい、累々と死体の積み上げられた閨などを想像させてしまうのです。空間の演出だけではなくシテ、ワキ、地謡の朗々たる謡が緩急交ざりあい、様々な場面へと観客をいざなって行きます。
鬼女という言葉から悪鬼のみを想像してしまいますが、普段は心静かに暮らしている老女。山伏に乞われて糸を紡ぐ場面では、はからずも源氏物語の夕顔のくだりにまで言及するのです。しっとり心に沁み込みます。
激しく叩かれる大鼓、小鼓、笛の音と共についに鬼女の正体を現し山伏達を追い詰め、巻き返され又追い詰め、しかし最後には凄まじい形相で消え去って行く、息もつかせぬ場面の連続で私の体中の筋肉がこわばるようでした。そして鬼女への同情でしょうか、一抹の虚脱感が残りました。
ボランティアライター 篠塚緑
第33回青葉能「黒塚(白頭)」が12月8日に上演されました。
舞台は現在の福島県二本松市安達原あたりに伝わる鬼女伝説を題材に作られたもので、「道成寺」「葵上」と合わせて三鬼女に挙げられる演目です。前シテでは、野中でひっそりと暮らしている女主人が
後シテでは秘密の閨をのぞかれ、鬼女となって旅人に襲いかかる物語です。演目に“白頭”とあるように女主人は老婆を示し、その変貌ぶりの演出は激しく見応えがありました。
上演に先立ち、金剛永謹(シテ方金剛流二十六世宗家)氏から、「能楽の舞台では最小限必要なものだけを形に残し、抽象的に表現することによって、場面も観客自身の想像の中で展開してく」という能楽鑑賞の真髄とも思われる解説がありました。
パンフレットには「詞章」が添えられ、後でじっくり読み返すうちに、現在では使われない言い回しの妙に感じ入るとともに、善意に対する裏切りに怒り狂った老女に同情の念が芽生えていました。
ボランティアライターズ 奥山薫
